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その他 「能楽」外縁観測第1部 6. 複数曲柄を持つ曲について

2020-12-21

① 複数曲柄の組み合わせパターン

複数の曲柄を持つ曲は、何番と何番との組み合わせが多いのか、あるいは、何番と何番の組み合わせはないのか、などを表で示します。次の表に示した12種以外の組み合わせはありません。

複数曲柄で組み合わせの多い3パターンについて、代表曲を示すと次のとおりです。
4・5番目物=59曲:葵上、安達原、天鼓、小鍛冶、融、殺生石、石橋、巻絹、鉄輪、海士、山姥、安宅、恋重荷。(神男女に属さず、雑物の4番目と一日の最後の曲の性格を持つ曲となっています。)
2・4番目物=28曲:巻絹、三輪、弱法師、俊寛、景清、花月、橋弁慶、鵺、望月、鉢木、求塚、盛久、正尊。(主として男性が主人公で、2番目物の性格があり、雑物にも入れられる曲になっています。)
3・4番目=20曲:巻絹、弱法師、班女、花筐、雲林院、胡蝶、卒塔婆小町、竜田、遊行柳、西行桜、玉鬘、籠太鼓、鸚鵡小町。(本来の鬘〔かずら物〕と言われる3番目物ではないが、雑物=4番目の曲の中で、女性や草木の精が主人公の曲などが入っています。)

最後に、4っつの曲柄を持つ曲が1曲だけあります。それは「巻絹」で、初番・3番・4番・5番目物の曲柄が設定されています。本来の曲柄は雑物の4番目物なのですが、各流儀で他の曲柄を兼ねる曲として設定されているものです。詳細を流儀別で見ると、初番=金春、金剛、喜多。3番=観世、金剛。4番=全5流。5番=宝生。となっています。(別に、略番では、略初番=観世、宝生。略3番=金春、喜多で設定されています。)これは、主人公の巫女に天神がのりうつって神楽(かぐら)を舞うことから、初番の神物にも、3番目の鬘(かずら)物ものにも、さらには5番目物にもなる要素を持っているからです。
② 略番の設定されている曲の数について

 略番については、能楽外縁観測5.「能」の流儀別・曲柄別の曲名の①後半に説明したとおりです。

 ここでは、略番と元柄の関係で、略番ごとの曲数などを見てみます。

表から分かるように、略番は全部で99曲に設定され、初番~3番目物が殆どを占め、4または5番目物は合わせても4曲しかありません。

 略初番目物は、元柄が5番目物または4番目物の曲がほとんどで、神がかった主人公の曲が選定されています。代表曲をあげれば、邯鄲、三輪、一角仙人、竜田、国栖、玄象、舎利、車僧、春日龍神、鷺、大会、当麻、山姥などとなります。

 略2番目物は、元柄の殆どが4番目物の曲であり、いわば雑物の中から男性が主人公となっている曲が選定されています。代表曲をあげれば、弱法師、俊寛、芦刈、安宅、景清、花月、橋弁慶、自然居士、鵺、鉢木、小督、盛久、正尊などとなります。

略3番目物は、元柄が4番目物の曲だけであり、雑物の中から女性や草木の精が主人公となっている曲が選ばれています。代表曲をあげれば、隅田川、百万、女郎花、班女、葛城、巻絹、花筐、砧、三井寺、遊行柳、西行桜、鸚鵡小町、木賊などとなります。
次の項目など、引き続き「能楽外縁観測第1部」をご覧になる場合は「謡曲の統計1」から進んで下さい。

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