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その他 能楽外縁観測 第3部-7 「謡曲十徳」などについて 

2022-04-02

十五徳とは別に、あるいはセットで十徳や十二徳が検索で出て来ることは既に記しました。
これらについて説明することとします。

十徳は、古書で3件、令和で3件あります。このうち十五徳とのセットの記載が古書で1件、令和で2件あり、他は単独の十徳となっています。
十二徳は古書で単独の1件だけで、令和では見られません。

古書に見る十徳の3件は、次のようになっています。
一つは既に詳しく紹介した①大心筆の十利です。これは後世に見ることのない独自の内容となっていました。
他の2件は、ほぼ同じ内容で、大心筆の十五徳から名所・歌道・閑居・鬱気・高位・神徳・仏道の7項を抽出し、「賤而遊貴人」・「不習知文字」・「愚癡而得悟」の3項(いやしうして貴人と遊ぶ、習わずに文字を知る、愚痴でも悟りを得る)を加えています。この十徳も後世には継承されなかったようです。

令和の3件は、大心筆の十五徳から同じ
10項目を抽出しています。
掲出された項目は、名所・知音・歌道・花月・閑居・鬱気・高位・古事・美人・仏道で、1件だけ「思」を「懐」としていました。(新旧字体の変更は「戀」→「恋」だけです。)

最後の十二徳は、②野上記念法政大学能楽研究所・伊達家旧蔵能楽資料デジタルアーカイブ>資料>謳徳十二條で、筆者や編者等は不明のものです。
伊達家旧蔵より江戸中期頃かと想像されます。
大心筆の十五徳から11項目を抽出し、「無道具愛舞曲」を入れています。
掲げた項目は、名所・歌道・花月・閑居・鬱気・座上・高位・古事・戦場・神徳・佛道となっています。
文字遣いは大心筆と次のように少し違っています。(「而」は略されている。)

「不習而識歌道」→「不慣知歌道」、
「望花月」→「花月」、
「無友而慰閑居」→「無慰閑居」、
「無薬而散欝氣」→「無療治散欝気」、
「昇座上」→「座上」、
「交高位」→「高位」、
「不軍而識戦場」→「不識戦場」、
「不觸而知佛道」→「自然到佛道」

結局、十徳と十二徳は、十五徳の省略版であり、新味は少ないと言えます。しいて言うなら、「不習知文字(習わずに文字を知る)」が目を引きます。

次の項目など、引き続き「能楽外縁観測第3部」をご覧になる場合は「謡曲の統計3」から進んで下さい。


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