これらについて説明することとします。
十徳は、古書で3件、令和で3件あります。このうち十五徳とのセットの記載が古書で1件、令和で2件あり、他は単独の十徳となっています。
十二徳は古書で単独の1件だけで、令和では見られません。
古書に見る十徳の3件は、次のようになっています。
一つは既に詳しく紹介した①大心筆の十利です。これは後世に見ることのない独自の内容となっていました。
他の2件は、ほぼ同じ内容で、大心筆の十五徳から名所・歌道・閑居・鬱気・高位・神徳・仏道の7項を抽出し、「賤而遊貴人」・「不習知文字」・「愚癡而得悟」の3項(
令和の3件は、大心筆の十五徳から同じ
10項目を抽出しています。
掲出された項目は、名所・知音・歌道・花月・閑居・鬱気・高位・古事・美人・仏道で、1件だけ「思」を「懐」としていました。(新旧字体の変更は「戀」→「恋」だけです。)
最後の十二徳は、②野上記念法政大学能楽研究所・伊達家旧蔵能楽資料デジタルアーカイブ>資料>謳徳十二條で、筆者や編者等は不明のものです。
伊達家旧蔵より江戸中期頃かと想像されます。
大心筆の十五徳から11項目を抽出し、「無道具愛舞曲」を入れています。
掲げた項目は、名所・歌道・花月・閑居・鬱気・座上・高位・古事・戦場・神徳・佛道となっています。
文字遣いは大心筆と次のように少し違っています。(「而」は略されている。)
「不習而識歌道」→「不慣知歌道」、
「望花月」→「詠花月」、
「無友而慰閑居」→「無伽慰閑居」、
「無薬而散欝氣」→「無療治散欝気」、
「昇座上」→「登座上」、
「交高位」→「昇高位」、
「不軍而識戦場」→「不戦識戦場」、
「不觸而知佛道」→「自然到佛道」
結局、十徳と十二徳は、十五徳の省略版であり、新味は少ないと言えます。しいて言うなら、「不習知文字(習わずに文字を知る)」が目を引きます。
次の項目など、引き続き「能楽外縁観測第3部」をご覧になる場合は「謡曲の統計3」から進んで下さい。



