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その他 能楽外縁観測第4部-1 雪・月・花の文字数

2022-07-22

 謡曲は、節を付けて謡う詩文で出来ています。
 「詩」ならば、昔から風流の根源とされる「雪・月・花」から始めたいものです。

 次のグラフは、146曲で使われている「雪・月・花」の文字を数え、1曲あたり平均で何回になっているかを示したものです。
 グラフを一見すれば、「花」の文字が多く使われていることが分かります。

 世阿弥が「風姿花伝」を遺したのは、末代までも「能の花」を伝えたかったからで、「花」のような美しさの追求が、生涯の目標だったのでしょう。その「花」が非常に多く出てくるのは余りにも当然なことではないでしょうか。なお、「秘すれば花」と言っていますが、舞台演出・表現上の秘伝と解すれば、矛盾はありません。(8/11本文追加)

 400字ほどについて数えた結果では、「花」は13位、「月」は20位で、「雪」は126位でした。
雪はともかく、花・月はさすがに非常によく使われています。


 2.のグラフは、「雪・月・花」の回数を曲柄別に示したものです。

 曲柄とは、世阿弥の序破急理論で、1日5番の能会において、演ずべき順序のことです。

 1番目の曲は、最初に演ずる能を指します。全ての謡曲には、1から5番の曲柄が決まっています。
 (曲柄の詳細は第1部参照)
 グラフから、3番目の女物または鬘かづら物と呼ばれる曲に「花・月」が多く出てくるのが分かります。

 具体的な曲名は別として女性と花が月光に照らされる場面が想像され、幽玄にふさわしい組み合わせとなっているようです。

 5番目曲の鬼物は、「月」を別として、「花・雪」の少なさが目につきます。やはり鬼と風流はマッチしないのでしょうか。そして鬼は月夜に出ることで恐ろしさが増すのでしょうか。

 1番目の神物は、他の曲柄と比べ、「雪」が多く「月」がやや少なくなっています。神様に「花・雪」は似合っても、「月」とは余り縁がないと言うことでしょうか。

 文字の持つ意味やイメージが曲柄に反映されるとは予想していましたが、使用回数に明確に表れるとは新鮮な驚きです。次回以降も引き続いて他の文字について数えた結果を示すこととします。

【予告】次回は「第4部-2 春夏秋冬の場合」です。

次の項目など、引き続き「能楽外縁観測第4部」をご覧になる場合は「謡曲の統計4」から進んで下さい。

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