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その他 能楽外縁観測第4部-14 曲柄構成とテキストの検討

2023-02-01

ここで、念のため5流から共通して採用されている146曲の曲柄別構成を確認しておきます。比較のために全248曲の曲柄別構成をグラフで並べてみます。

一つは、現行全248曲の曲柄構成です。
次は、5流で共通採用されている146曲の曲柄構成です。
二つのグラフは、細かく見れば違いがありますが、一見しただけでは、同じように見えます。これは、146曲を分析すれば、全248曲を分析した結果とほぼ同じになることを示しています。従って曲柄別構成から見ても146曲の選定は妥当であると言えます。

次に、謡曲詞章テキストの検討です。
パソコンで文字検索するには、146曲の本文テキストが必要です。世の中にはご奇特な方が居られるもので、「謡曲三百五十番を機械可読テキストにしようとするプロジェクト」の労作を公開された方がおりました。その概要は、次のとおりです。

入力作業:1998~2010年
呼び掛け:高橋<半魚>明彦(金沢美術工芸大学 1964年生れ)
底本①:日本名著全集第29巻・江戸文芸之部 「謡曲三百五十番集」 1928年刊・全792頁・日本名著全集刊行会編、著、刊 (底本②で補足する)

底本②:「謠曲二百五十番集」・1978年京都赤尾照文堂刊・全623頁 野々村戒三1877~1973編・大谷篤蔵1912-1996補訂(番外51番を含まず)

Web:半魚文庫HP/謡曲三百五十番/いまはなにをかつつむべき
著作権:本文解読利用のためのフリーデータ。本文コピーを刊行するのは問題。

この底本①②がどの流儀を元としたかは不明です。100年前の底本①の比重が大きい注ことから、大正末期の能楽界の状況を反映していると思われ、現在と同様に観世流が大半を占めていると思われます。これは、室町時代の能楽大成当時から現在に至るまで変わらぬ傾向であり、これを否定すればかえって特定流儀を恣意的に扱うことになります。従って現時点で各流儀を公平に扱う立場からは、上の機械可読テキスト・三百五十番から分析することに問題はないものと考えます。(注:146曲の構成比では、底本①が70%、底本②が20%、底本未記入が10%となっています。)

これで、146曲を対象にして、曲柄別に分けて、特定文字を抽出することで、謡曲世界を色で捉えようとする作業が整ったこととなります。その結果がこれまでの紹介記事でした。


【予告】次回は「第4部-15 146曲の曲名内訳」です。

次の項目など、引き続き「能楽外縁観測第4部」をご覧になる場合は「謡曲の統計4」から進んで下さい。

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