その他 能楽外縁観測第4部-17-1 曲柄別の文字数などについて1/2
2023-03-15
前項では、146曲全体を概観しましたが、曲柄別に文字・文章・口上の数を比較すると、興味深い結果が得られましたので、グラフを交えて紹介します。
グラフ数の関係から、2回に分けて掲載します。
①曲柄別文字数比較グラフ
146曲のテキスト総文字数は約31.5万字で、1曲当りでは約2200字となっていました。これを曲柄別にグラフにしたものが①です。(曲柄についての詳細は外縁観測第1部参照)
一見して分かることは、1番目の曲が全体平均の73%と、他の曲柄に比べて少ないことです。続いて5番目が90%でやや少なくなっています。
これは、1番目がいわゆる「神」物で、1日5番立て能の場合の「序」にあたり、観客に分かり易く、目出度い曲を旨としていることから、1曲のボリュームも短くなっている証アカシです。同様に、5番目は「急」の曲になるので、
ダラダラせずに終わることを旨として、曲自体が比較的に短くなっている結果と思われます。2~4番目は「破」の曲であり、趣向を凝らし、芸を尽くした場面を展開することから、ややボリュームが大きくなっています。但し、3番目は、所謂イワユル「女物」(鬘マゲ)物であり、幽玄な美しさに象徴されることから、あまり複雑なストーリーを追うものではなく、平均的な文字数に納まっているものと思われます。
②曲柄別文章数比較グラフ
146曲の文章は総数で約3.1万あり、1曲当り平均では約210文章となっていました。1曲の文字数と文章数は比例関係にあり、曲柄別に比較してもあまり変わらない文字数となっています。しかし、よく見ると①の文字数グラフ程には曲柄による差が少ないことに気付きます。これは、小品の短い曲は文字数も少なく、個々の文章も短くなっている結果のように思われます。逆に大曲と言われるボリュームのある曲は、当然に文字数も多くなり、更に個々の文章も長くなっている傾向があるように思われます。
③曲柄別口上数比較グラフ
146曲の口上数は約8500回で、1曲当りでは58回となっていました。
主人公や相手役など、一人で謡う部分は、1回の口上で、1文章か数文章で終わりますが、合唱の地謡ジウタイは文章を連面と連ねる場面もあり、これを一諸くたに扱うのは無理があるのですが、大まかな傾向を知ることはできるのではと思います。
グラフで見ると、曲柄別の差は、文章数の差よりさらに少なくなっています。これは、1回の口上で述べる文章数や文字数は大体同じで、曲柄による差が少ないことを示しています。それでも1・5番目は、1回の口上で述べる文章数が少なくなっている傾向が見られます。
【予告】次回は「第4部-17-2 曲柄別の文字数などについて2/2」を2023.4/1に掲載の予定です。
次の項目など、引き続き「能楽外縁観測第4部」をご覧になる場合は「謡曲の統計4」から進んで下さい。