その他 能楽外縁観測第4部-19 使用頻度の高い172字
2023-05-01
何をもって使用頻度が高いとするかは判断の別れるところでしょう。ここでの結果は後で示します。
その前に、全体としていくつの文字を拾って数えればよいのかは、恐らく誰にも分からないでしょう。詞章を眺めて多く使われているように思える文字を適当に選んで数えるしか方法はないようです。AI(人工知能)が使えれば別ですが、個人用パソコンの作業には限界があります。当てずっぽうで拾った文字で数えたら、350字ほどになりました。兄弟姉妹を数えたら、「姉」は146曲で3回しか登場しませんでした。
このような内容の350字は、漢字全体の中では、どんな位置を占めるのでしょう。漢字の総数は10万以上とか、数十万とも言われています。一方、国が定めた常用漢字は2136字であり、新潟県の生んだ偉人・諸橋莞爾カンジの大漢和辞典は5万の親字を収めています。350字は常用漢字の16%にしかなりませんが、常用漢字が大漢和辞典の4.3%たらずであることと比べれば、そこそこの割合を占めていると考えても良いのではと思います。
グラフにすれば次のとおりです。そこそこのご理解は得られるでしょうか。
ここで350字を示しても何の意味もないでしょう。350字の調査から謡曲多用文字の分布をグラフで見て、多用文字の境界を引いてから示すこととします。
最初のグラフは特定文字の1曲当り使用数を多い順に文字数、つまり順位を数えたものです。

グラフからは1回以上多用の文字は、20位刻みの文字使用回数に大きな変化がありますが、1回/曲未満では僅かな差しか見られません。
つまり、使用頻度が少なくなると、僅かな回数差に、多くの文字が並ぶことになります。
従って以下には、使用頻度が1回/曲以上の172文字を、2回/曲以上の80文字と、1~1.9回/曲の92文字の2回に分けて示すこととします。そして1回/曲未満の文字は、謡曲特有の文字とは必ずしも言えないと判断して省略することとします。
なお、50音順の読みは、訓クンによることとしました。
但し、「天」は訓で「あま」と読み、音オンで「てん」と発音します。また「一」は訓で「ヒトつ」、音で「イチ」と読みます。これらのように音による読みが多いと思われる場合は、音による50音順にしたものが少なくありません。
A.2.0回/曲以上:1~80位
(太字は1~10位の文字)
㋐行:間 有 言 一 今 色
上 歌 大 音 思 面
御 女
㋕帰 影 風 神 木 聞 君
給 草 国 雲 来 子 声
心 事 如 此 衣
㋚参&三 下 知 白 住 生
候 其
㋟立 月 着 出 天 時 所
㋤名 中 何 波 野
㋩葉 入 花 春 日 人
不 法 仏 程
㋮又 松 見 身 実 水
道 都 明 申 者 物
㋳山 行 世 夜
(㋶行は該当なし)
㋻我
B.1回~1.9回/曲:~172位
㋐行:秋 朝 跡 雨 家 急
命 居 浮 内 打 海 浦
恨 得 老 落 鬼 重
㋕川 清 狂 現 語 後 是
㋚桜 里 様 士 拾&十 姿
千 僧 空
㋟田 代 第 高 頼 旅 玉
誰 地 小 近 力 通 土
経 露 寺 度 唐 処 年
殿 鳥 取
㋤長 西 残
㋩早 原 光 引 深 二 舟
船 古 平 本
㋮舞 前 待 守 万 宮 無
昔 目
㋳夕 故 雪 夢
㋶楽 路 郎
㋻和 若 渡
【予告】今回をもって第4部の謡曲の文字を数えるシリーズを終了します。次回からは、第5部を展開させる予定です。第1~4部と重複する所も出て来ますが、一部修正を加えながら新しい切り口で能楽・謡曲に迫ってみようと思っています。現在、そのデータ整理に奮闘しています。次回からは掲載間隔が不規則になりますがご了承下さい。
次の項目など、引き続き「能楽外縁観測第4部」をご覧になる場合は「謡曲の統計4」から進んで下さい。