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その他 能楽外縁観測第 5部-3 世阿弥期演目の曲柄

2023-07-15

では、世阿弥期演目の曲柄をグラフで示します。現行曲と比較した曲柄別の曲数推移としました。(曲柄とは世阿弥の序破急理論による5番能を演じる順番です。詳細については能楽外縁観測第1部を参照してください。)
①の世阿弥期から継続して演じられている65曲では、1~5番目の曲柄に欠けるものはありません。しかし、狂い物などを寄せ集めた雑物ともいえる4番目曲が半分近くを占め、男物の2番目が2割近くありますが、1番目の神物・3番目の女物・5番目の鬼物はいずれも1割程度で、曲柄のバランスがとれているとは言えません。

②は世阿弥期に演じられながら途中で中断し、江戸期に再興されて現行曲となったものですが、2番目の男物と3番目の女物の曲がなく、すでに多くの割合を占めていた4番目が半分以上もあります。①の曲柄バランスを解消するための復興ではなかったようです。

③は現行曲の曲柄構成ですが、2番目の男物は、世阿弥期の12曲から4曲しか増えていません。他の曲柄では、1番目は26曲、3番目は31曲、4番目は56曲、5番目は44曲も増えているのに…。変わった趣向で新曲を作ろうとすると、型にはまった名曲揃いの曲柄ではなく、自由に題材を選べる雑物の4番目などになったのかも知れません。

次回は、世阿弥期演目の作者構成をグラフで示します。

引き続き第5部をご覧になる場合は、「謡曲の統計5」から進んでください。

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