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その他 第6部-7 江戸初期下位曲と現代の曲別演能頻度

2024-04-30

前節同様に、江戸初期演目全163曲で演能回数が下位に相当する76~100位の曲について、現代の演能頻度との比較グラフを示します。
上のグラフで現代の演能頻度が約50倍以上となっている曲を挙げると、経正47.5倍、殺生石69.1、班女133、車僧48.9、隅田川154、卒塔婆小町55.8、望月75.7倍がリストアップされ、全て現代の人気曲となっています。逆に現代で少ない曲は谷行1.2倍、現在鵺0、関寺小町2.3、藍染川0.9倍となっています。(関寺小町は重い習い物の秘曲で簡単には演じられない曲となっています。)
増加率が約500倍以上の曲は、石橋544倍、976、鶴亀492、鉄輪1081、雲林院548倍です。元が小さな数字なので増加率が大きくなっています。江戸初期であまり見向きもされなかった曲の中に、現代で度々演じられる曲のあることに興味を覚えます。石橋は豪壮な獅子舞で知られ、歌舞伎に取り入れられて連獅子としても舞われています。鉄輪は嫉妬した女性が丑の刻参りをして鬼になって現れ、祈祷キトウする行者ギョウジャと争う劇的展開から人気曲になっています。 

次は、江戸初期である程度以上演じられた曲で、現代演能頻度が18倍以上となっている25曲のグラフです。(注:江戸初期の演能頻度を、グラフ表示の関係から30年間平均回数としています。)
他のグラフでも見られたように、羽衣が129倍と断然増加率トップです。富士山を望む三保の松原に天女が降り立って天下泰平を寿コトホぐ優雅な舞を舞う曲で、庶民にも為政者にも好かれる内容となっています。上のグラフの25曲は江戸初期と現代で共通してよく演じられた曲が並んでいます。歴史に検証された名曲揃いで、観てヨシ、演じてヨシ、謡ってヨシの25曲と言えます。

次回は2024.5/15に第6部-8「現代で演能の多い曲の江戸初期との比較」を掲載する予定です。

引き続き第6部をご覧になる場合は「謡曲の統計6」から進んでください。

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