その他 第6部-8 現代で演能の多い曲の江戸初期との比較
2024-05-12
次のグラフは江戸初期である程度演じられた曲で、現代でもよく演じられている曲について、演能頻度を比較したものです。年平均回数が20倍以上の25曲を表示しました。
小鍛冶が245倍で増加率トップになっています。能舞台で刀鍛冶が鎚を振り下ろすダイナミックな演出が現代人にウケているようです。増加率上位に隅田川、望月、盛久、西行桜、遊行柳、卒塔婆小町、鉢木と、名曲とされる習い物の曲がズラリと並んでいるのが注目されます。
次は、江戸初期で演能が少ない曲なのに、現代で多く演じられている曲のグラフです。江戸初期で1,2回程度演能の曲が、現代で度々演じられている曲のあることが分かるグラフになっています。
石橋、鉄輪、巴は、現代で毎年10回以上も演じられていますが、江戸初期では79年間で1回か2回しか演じられていませんでした。グラフには、江戸初期であまり演じられなかった曲なのに、現代で毎年1.8回以上演じられている曲が並んでいます。
曲別演能頻度のグラフの最後に、江戸初期で演能なしの曲で、現代の60年間で100回以上も演じられている27曲を示します。
江戸初期に演能記録のない曲で、現代で毎年春夏秋冬と同じ4回以上も演能の曲が17曲もあり、このうちの7曲は現代で毎年10回以上も演じられています。また、17曲の中には習い物の曲が弱法師、俊寛、花筐、砧、玄象、恋重荷、求塚、大原御幸と8曲も含まれています。
次回は2024.5/31に第6部-9「将軍宣下祝賀能について」を掲載する予定です。
引き続き第6部をご覧になる場合は「謡曲の統計6」から進んでください。