前節で欠けた徳川11・12・14代の将軍宣下祝賀能を含めて紹介することとします。
この3代についてWebでは番組等を検索できませんでしたが、野上記念法政大学能楽研究所編「能楽研究」(2007~2010年/第31~34号、2012年/第36号)を入手し「触流し御能組」(全489頁)から把握することができました。
「触流し御能組」は、第6部-1で紹介した「江戸初期能番組七種」論文の続編であり、表章代表をはじめ同じ11名の研究者による労作です。演能年月日・行事名・会場・曲名・囃子方等を含む演者名が小さな7P文字でビッシリと並んでいます。諸資料による照合も行われ、原本で略称の演者名を正確に記載し、能/狂言/略式演奏別に記し、曲名別・演者別の膨大な索引が付けられて、他に例を見ない貴重な資料となっています。
その略解題から概要を抜粋すると次の通りです。
『享保6年(1721)から幕末(1862)までの主として江戸城での演能番組を集めたもの。江戸時代資料として最も厖大かつ有用。2種の伝本があり共通原本は確認されていない。①法政大学鴻山文庫本が、②早稲田大学演劇博物館安田文庫本より脱落が少なく、①を基本に編集。①は、縦154・横209㎜の袋綴中型横本全五冊を紺色布張りの一帙に収める。各冊とも黒表紙に題簽なく、墨書による外題もない。帙の上側の左上の薄茶色題簽(115×31)に縦書きで「ふれながし御能組 五札(享保年ヨリ文化十一迄)」と旧蔵者江島伊兵衛氏の筆。』
巻構成は次の通り。
巻1:享保ヨリ/元文・寛保・延享/寛延・宝暦三迄(1721~1753)389種、199丁
巻2:宝暦四ヨリ・明和/安永・天明四迄(1754~1784)236種、200丁
巻3:天明五ヨリ/寛政・淳和(1785~1803)133種、131丁
巻4:享和四/文化改元/文政十一迄(1804~1828) 215種、171丁
巻5:文政十一ヨリ/文久二迄(1828~1862)226種、176丁
合計では、1199種、877丁。(種とは行事件数=番組件数のことと思われます。)
これで、将軍宣下祝賀能の全体(14代・14回・60日・400番)が把握できましたので、その曲名とシテ役担当流儀を表にして示します。全体で3表となっています。






