5部-28の将軍宣下祝賀能の演目&流儀の3表の400番を、曲名ごとに集計して回数を数えると次のようになります。現行曲・非現行曲・切能に分けて示します。(ゴシックは観世流で習い物の曲となっています。同じ回数の曲名は50音順としました。)
①現行曲(81曲・341番)
60回:翁(1日の最初に必ず演じられています。)
11回:東北、羽衣(計2曲)
10回:箙、善界、田村(3曲)
9回:賀茂、高砂、芭蕉、屋島(4曲)
8回:老松、実盛、弓八幡、熊野(4曲)
7回:石橋、難波(2曲)、
6回:江口、烏帽子折、忠度、道成寺、橋弁慶(5曲)
5回:鞍馬天狗、張良(2曲)
4回:碇潜、白鬚、竹生島、土蜘蛛、知章、半蔀、船弁慶、紅葉狩(8曲)
3回:葵上、猩々乱、天鼓、野宮、氷室(5曲)
2回:嵐山、善知鳥、花月、通小町、源氏供養、小鍛冶、舎利、鍾馗、関寺小町、千手、東方朔、松風、三井寺、養老、羅生門(15曲)
1回:安達原、生田敦盛、鵜飼、女郎花、柏崎、兼平、清経、熊坂、車僧、項羽、桜川、自然居士、春栄、殺生石、大会、竜田、谷行、経正、藤栄、唐船、融、白楽天、放生川、通盛、三輪、六浦、盛久、山姥、頼政、輪蔵(30曲)
②非現行曲(3曲・各1番・計3番)
植田(1家康の2日目)、岡崎(1家康の3日目)、藤渡(2秀忠の3日目)。なお、1623年の3代家光以後の演目は全て現行曲として存続しています。
③1日の終わりの祝言切能(8曲・53番+曲名不明3番の計56番。但し、半能形式ではない「猩々乱」4回と「熊坂」の1回は①の現行曲に分類しました。)
13回:祝言呉羽クレハ
12回:祝言養老
10回:祝言岩船・祝言金札
3回:祝言高砂・祝言弓八幡
1回:祝言老松・祝言志賀
祝言呉羽や祝言養老などの曲は、特殊演出「祝言之式」小書で演じられ、半能形式に近い形となっていたようです。
なお、現行観世流で「祝言之式」小書のある曲は、嵐山、淡路、呉羽、逆矛、高砂、養老の6曲だけとなっています。上に示した岩船、老松、金札、弓八幡に、現在は「祝言之式」小書はありません。
現在の能会では、5番立てなどの番組は稀ですが、その場合には、いわゆる5番目曲の鬼神の登場する能で締め括っており、祝言○○という半能形式の演目を演ずることは稀なようです。現在は、5番立て納会に限らず、最後の能に祝言性が欠ける場合は、「附ツケ祝言」として、高砂の「千秋楽」や猩々の「尽きせぬ宿」などの目出度い句を地謡ジウタイが謡っています。
14回の初日・80番に限定してシテ方流儀をグラフにすれば次のとおりです。




