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その他 第6部-17 江戸中後期の曲別演能回数1/3

2024-09-10

それでは江戸中後期の141年間の主として江戸城での曲別演能回数(番数)を、将軍時期別に表で示します。(本邦初公開と思われます。)

全体6037番の内訳であり、8表となるので、3節になりますが一挙に掲載します。なお、50年間在位の11代家斉については前期と後期に分けました。各期間の詳細は前節に示したとおりです。

単なる演能回数だけでは、その曲がその期間で相対的に多く演じられた曲なのかが分かりませんので、よく演じられたことを色付けして示すこととします。

緑色はその期間で他の曲より頻繁に演じられたAランク曲、紫色は良く演じられたBランク曲を示しています。ランクの基準等は後で示します。

ゴシックの曲名は現行観世流で習い物の曲です(他流でも大切にされています)。

曲名の黄色塗りは、観世流謡本で百番集の所収曲(昔の内百番に相当するポピュラーな曲が主体で、百番集所収ではない曲)です。

なお、「触流し御能組」(江戸中後期資料)に演能記録がない曲でも現行曲については表に載せました。但し、江戸中後期に演能記録がなく現代調査回数対象外の曲(観世流非現行曲など)の14曲は、8/8表の後にその曲名を載せました。
上の1/8表から「翁(謡曲では神歌)」は江戸中後期でダントツの演能回数となっているのが分かります。ほとんどの行事で先ず「翁」が舞われてから次の能が演じられているからです。現代の60年間実績でも年間平均で15回以上のAランク頻度です。(調査対象の観世流以外を加えれば30回以上と想定されます。)

曲ごとによく見ると、江戸中後期を通じてよく演じられた曲、あまり演じられなかった曲、ある将軍時期でよく演じられた曲が他の時期では余り演じられなかった曲のあることが分かります。また、江戸期と現代の比較もできます。

例えば、「鵜飼」は11代家斉将軍時期まではよく演じられたのに、12代以降の将軍期では1回も演能されていません。また、「嵐山」と「生田敦盛」は江戸中後期でよく演じられていたのに、現代では余り演じられない曲になっています。逆に、「歌占」と「采女」は現代でよく演じられているのに、江戸中後期では余り演じられていません。

それでも、1/8表の30曲のうちの11曲は、江戸中後期と現代共通で比較的によく演じられ、14曲は江戸中後期も現代もあまり演じられない曲となっており、現行曲の大部分の曲は、江戸中後期と現代で演能頻度がほぼ同じ傾向にあることが分かります。(但し、観世流非現行曲の「綾鼓」など現代演能回数調査対象外の曲の一部に、或いは現代でよく演じられている曲があるかも知れません。)

以下の各表からも同様な比較が可能となっています。よく吟味してご覧頂ければ幸いです。
引き続き「江戸中後期&現代 曲別演能回数」をご覧になる場合は「謡曲の統計6」から第6部-18を選択してください。

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