今回は江戸中期(1690~1779)勧進能番組2件と、後期(1780~1868)のうち幕末以前の勧進能番組2件の計4件を掲載します。
1702元禄15 観世 京都北野七本松
盛衰記262P及び観世文庫3/11宗「元禄十五年京都七本松勧進能番組(一部のみ)」より。ゴシックは観世13世織部滋章(重記・1716享保元没51才)がシテ。
①9/18翁 高砂 田村 江口 土蜘蛛 柏崎 善界 祝言呉服
②9/19翁 氷室 忠度 *松風 紅葉狩 邯鄲 *安宅 *山姥
③9/25翁 賀茂 頼政 羽衣 *道成寺 三輪 張良 大仏供養
④9/26翁 輪蔵 半蔀 船弁慶 鵜飼 自然居士 海士 乱
全32番(うち習い物曲4番)。観世大夫18番(うち習い物曲3番)。
古記録では、入場札数が、①6218枚、②6219、③9615、④4613の計26665枚、桟敷サジキ席84番迄、畳席2640帖、建物屋根面積694坪と記されています。
1750寛延3 観世一代能 江戸筋違橋
観世文庫1/6/5「寛延三年神田筋違橋勧進能番組」、早稲田「勧進能番組(梅若誠太郎家旧蔵)」、法政能研「寛延・文化・天保勧進能図巻(但し、寛延は14・15日目のみ)」を参照しました。
過去に例のない長期興行。3月18日~5月23日の晴天15日間(④⑪⑫の月/日は観世文庫資料による)。ゴシックは観世15世左近元章29才(1772安永3没53才)がシテ。赤字はその弟の織部清尚(観世17世宗家・1782天明2没56才)がシテ。
①3/18高砂 田村 江口 芦刈 船弁慶 土蜘蛛 祝言金札
②3/22寝覚 頼政 芭蕉 竜虎 *山姥 忠信 鵜飼
③3/23老松 兼平 熊野 竜田 小塩 鞍馬天狗 舎利
④3/26嵐山 敦盛 杜若 百万 邯鄲 鉄輪 羅生門
⑤4/6白髭 *実盛 班女 春栄 善知鳥 紅葉狩 融
⑥4/7玉井 屋島 六浦 柏崎 三輪 咸陽宮 大瓶猩々
⑦4/11氷室 通盛 *松風 天鼓 巻絹 *安宅 第六天
⑧4/22翁 弓八幡 箙 井筒 自然居士 輪蔵 野守 合浦
⑨5/12翁 賀茂 経政 雲雀山 吉野天人 阿漕 張良 夜討曾我
⑩5/13翁 江島 橋弁慶 半蔀 *道成寺 *西行桜 項羽 殺生石
⑪5/18翁 難波 巴 羽衣 小督 *隅田川 善界 烏帽子折
⑫5/19翁 逆鉾 知章 源氏供養 三井寺 梅枝 *鉢木 大會
⑬5/21翁 養老 熊坂 楊貴妃 唐船 *藤戸 車僧 海士
⑭5/22翁 呉服 忠度 野宮 *石橋 東岸居士 女郎花 大仏供養
⑮5/23翁 代主 *正尊 東北 安達原 春日竜神 小鍛冶 猩々乱
全113番(うち習い物曲11番)。観世元章41番(うち習い物曲10番)、弟の清尚が習い物を除く15番を勤めています。前半の7日目までは「翁」がなく、後半からあるのは珍しい例です。(元章・清尚については第7部-4を参照ください)
1782天明2 大阪難波新地
神戸女子大「天明二年勧進能興行番組」より(流儀不明。演者読み取れず)
①4/6 翁 高砂 田村 羽衣 羅生門 邯鄲 野守 金札
②翁 白楽天 頼政 井筒 *砧 船弁慶 是界 呉服
③翁 賀茂 *実盛 胡蝶 *道成寺 三輪 舎利 養老
④岩船 忠度 誓願寺 三井寺 鵜飼 海士 熊坂
⑤東方朔 経政 班女 女郎花 *望月 枕慈童 春日竜神
⑥項羽 巻絹 小督 *山姥 鉄輪 大仏供養 乱
全45番(うち習い物曲5番)。前半3日間だけ「翁」があり後半にはない。
1816文化13 観世一代能 江戸幸橋
観世文庫3/5/1「文化13年観世大夫勧進能番組」と古川久「幕末の観世勧進能」より。古川資料:前年に19世観世大夫清興キヨオキ(1815文化12没55才)が願い出て文化12年興行のはずだったのを、同年9/6に急逝したため、後嗣の清暘キヨアキラが引き継ぎ、翌年に延期して興行することになった。文化13年8/4の暴風で9/3予定の初日が9/22となった。2日目の9/23は雨で10/2へ順延され、演能後の出火で会場が全焼し、会場作り直しで3日目は翌年4/19となった。観世大夫は幕府から1500両(現在では1億円以上)を借用して再開させた。
ゴシックは観世大夫の観世20世左衛門織部清暘キヨアキラ(1830文政13没50才)。赤字は観世21世織部清長(1842天保13没33才)と思われる(観世文庫資料では観世織部と記載。古川論文ではシテ等の氏名の記載なし)。
①9/22 高砂 田村 羽衣 船弁慶 祝言金札
②10/2 賀茂 屋島 雲林院 芦刈 鞍馬天狗
③1817.4/19翁 白楽天→弓八幡 *実盛 桜川→東北 夜討曾我 春日竜神→岩船
④西王母 項羽 *松風 熊坂 善界
⑤三輪 *鉢木 蝉丸 阿漕 土蜘蛛
⑥大社 小督 江口 葵上 海士
⑦張良 七騎落 *山姥 善知鳥 紅葉狩
⑧邯鄲 忠信 半蔀 *望月→小鍛冶 *玄象
⑨蟻通 *安宅 竜田 *俊寛 舎利
⑩輪蔵 橋弁慶 草紙洗小町 *道成寺 鵜飼
⑪翁 嵐山 大仏供養 *当麻 鉄輪 車僧
⑫翁 合浦→和布刈 *盛久 *砧 天鼓 野守
⑬翁 生島 東岸居士 *恋重荷 通小町 烏帽子折
⑭翁 玉井 禅師曾我 富士太鼓 *石橋 融
⑮9/18翁 鶴亀 春栄 吉野天人 安達原 乱
全81番:番組変更前曲も数えると86番(うち習い物曲は変更前を含めて14番)。当代観世大夫シテ33番(うち習い物曲9番)、次期大夫シテは19番(習い物曲はなし)。
③と⑪以降の「翁」は古川久論文では「(ナシ)」とされているが、観世文庫資料では当初番組に朱字で追記を確認。「→」は両資料とも番組変更を記載。15日目の9/18の日付は、観世文庫所蔵能楽史料解題目録の説明(但し、擦り消えて読みにくいと記しています)による。
次回は、江戸末期の番組を2025.8/15に第8部-7「江戸末期勧進能の番組」を掲載する予定です。
引き続き第8部をご覧になる場合は「謡曲の統計8」から進んでください。



