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その他 第10部-5 時代別演能回数評価方法

2026-10-27

 前節まで、時代別の曲別演能回数分布グラフを示してきました。これからは、時代を超えて各曲の演能回数を公平に比較・評価できる方法を探ることとします。

 前節のグラフで見たように、どの時代も限られた上位曲が頻繁に演能され、下位曲は曲数が多く回数は少なくなっていました。
 この状況を詳しく見るため、まず時代別に上位5曲の演能回数が、その時代の総演能回数に占める割合を示します。
 どの時代も僅か5曲の演能回数が全体のほぼ10%を超える割合を占めています。織豊期は「能の留帳」によるデータが多く、全体の演目数が減少し、下間少進が好む曲が繰り返し演じられて、トップ5位の曲が占める割合が高くなっています。また、江戸中後期は希曲等の複曲が進み、曲目数が増えて、トップ5位曲の占める割合が低下しています。他の時代では10.2~13.8%とほぼ12%前後の比率になっています。

 時代を超えて演能回数を公平に比較・評価する方法は簡単には見つかりません。第10部-2の表で見たように、時代別で同じ1位の曲でも、演能回数は7~1146回と大きな差があり、各期の回数を合計しても意味がありません。時代ごとの曲数も異なっており、各期の記録期間も長短様々です。
また、時代ごとの回数順位を一定数で区切って点数化したら、境界付近に多くの曲が並び、回数の僅かな違いで評価点が大きく異なるケースが多く、公平性が保てませんでした。
 そこで最終的に辿り着いたのが次の方法です。まず、時代ごとで5ランク分けをイメージして計算式で連続的に点数化することを考えます。計算式は、1回だけ演能の曲を1点とし、その時代の演能回数上位5曲の平均回数の曲を5点とするように定めます。平成期を例として示せば、上位平均が886.6回、最少が1回なので、評価点Y=0.0045X+0.9955(Xは各曲の演能回数)となります。グラフでは次のようになります。
 これにより、時代ごとに演能回数に応じて連続的にその評価点を求めることができます。各時代の点数化式を示すと次のとおりです。
  室町中期:Y=0.8X+0.2
  室町後期:Y=0.1481X+0.8519
  織豊期:Y=0.0926x+0.9074
  江戸初期:Y=0.0317X+0.9683
  江戸中後期:Y=0.0337X+0.9663
  明治期:Y=Y=0.1176+0.8824
  昭和期:Y=0.0045X+0.9955
  平成期:Y=0.0045X+0.9955
 
 ここで上の式から時代別の曲別回数に応じて評価点を計算してまとめた表を示します。なお、室町初期につては回数が不明のため、継続して演じられた◎曲を3点、一旦中断して再興された○曲等を2点としました。なお翁は「能であって能に非ず」という特殊な曲で、江戸以前では儀式的に極めて多く演じられたので、評価対象から除くこととしました。
 上表で各時代の評価点数計を見ると、230~430点と幅があり、1.9倍の差があります。これは基本的には曲数の多寡が原因であり、室町初期~織豊期までが300点以下、江戸初期~平成期が300点以上と近現代が多くなっています。各時代を平等として同じ合計点にするのもどうかと思われ、江戸中後期が最大になっていても141年間という期間の長さを考慮すれば受け入れ易く、昭和・平成期がこれに次いでいるのも現在に近い期間であり、豊富な演能データによるものであることから、曲別の評価点を求める観点から、排除する必要はないと考えます。
 次に、1曲当りの平均評価点を見ると、やや不公平と思われる部分があります。まず、室町初期の平均が2.7点と高くなっていますが、世阿弥活躍期=能楽大成期の演能記録であり、根源的なデータであることから許容すべきと考えました。
また、織豊期が約2点/曲と高く、明治期が1.7で平成期も1.8点未満とやや低くなっています。他の時代は1.95~1.85で、その平均は1.9点/曲となっています。そこで、織豊期は短期間で曲数も少なく限られた曲が頻繁に演能されたことが影響しているのでマイナス5%の1.884とし、明治・平成期はプラス5%の1.784・1.887と修正して、1曲当たり点数を均すこととします。(明治が少し少ない値になっていますが、期間が最短であることなどを考慮して更なる加点はしないこととします。)

 以上で曲別演能回数を点数化することが出来ました。次節からは、その結果をグラフで見ることとします。

 次回は、2026.11/15に第10部-6「室町~平成曲別演能回数評価グラフ」を掲載する予定です。
 引き続き第10部をご覧になる場合は「謡曲の統計10」から進んでください。

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