その他 「能楽」外縁観測第2部-3 現代の人気曲
2021-04-02
現代の人気曲は、前回に紹介した戦後の60年間での曲別演能回数で見ることとします。その演能回数データの概要を紹介します。
統計集計対象は、昭和25=1950年から平成21=2009年の60年間で、月刊「観世」誌記載の有料演能番組となっています。翁は対象としていますが、大典・三山・松浦佐用姫は対象外となっており、全部で208曲となっています。(観世流だけの集計となっているので、5流現行の248曲より少なくなっています。)
60年間で、72420回(曲別)を記録し、1位は「羽衣」の1868回=31.1回/年となっています。(詳細は大角征矢氏のHPを参照して下さい。)


60年間の平均で、毎年10回以上公演された曲が45曲あり、5回以上は87曲あることが分かります。また、1年に1回の公演に満たない曲が42曲あることも分かりました。
人気上位曲を設定しようとする場合、どこに線を引くべきか迷います。全体を半分にして上位・下位に分けることを想定することとします。
現行248曲の半数は124曲となり、演能回数が毎年2回以上に線を引けば、130位までとなり、半数との差は6曲となります。(毎年3回以上とすると半数との差は11曲となって、少し乖離があります。)
故に、上位130曲を現代人気曲上位に位置付けることとします。前回示した「古謡本と現代人気曲」のグラフは、130位以内と131位以下で示したものでした。
以下、外縁観測では、曲名を表示するときには、特に断りがない場合、上位130曲をゴシックで示すこととします。
参考までに、演能回数別の曲名を50音順で掲げておきます。
ゴシックの曲名は、現代人気曲130位以内(=2回/年以上)の曲です。なお、観世流大成版謡本(檜書店刊)で続百番集所収の曲を赤字としました。(黒字は昔の内組に相当する百番集所収曲で、続百番集は昔の外組本に相当します。)
演能回数別の曲名
10回/年以上の曲:45曲(全部が百番集所収の曲)
翁 葵上 安達原 海士 井筒 鵜飼 杜若 花月 葛城 鉄輪 通小町 邯鄲 菊慈童 清経 小鍛冶 石橋 俊寛 猩々 隅田川 殺生石 蝉丸 千手 高砂 田村 土蜘蛛 経正 天鼓 道成寺 融 巴 羽衣 半蔀 花筐 班女 百万 藤戸 船弁慶 巻絹 松風 三輪 紅葉狩 屋島 山姥 熊野 弱法師
5回/年以上の曲:42曲
阿漕 芦刈 安宅 敦盛 善知鳥 采女 雲林院 江口 景清 賀茂 砧 国栖 熊坂 鞍馬天狗 源氏供養 玄象 恋重荷 小督 小袖曽我 胡蝶 自然居士 善界 卒都婆小町 忠度 竹生島 鶴亀 東北 鵺 野宮 野守 橋弁慶 鉢木 富士太鼓 二人静 放下僧 三井寺 望月 盛久 遊行柳 楊貴妃 養老 頼政
3回/年以上の曲:26曲
嵐山 一角仙人 岩船 歌占 箙 大原御幸 女郎花 春日龍神 車僧 西行桜 桜川 実盛 舎利 俊成忠度 正尊 草子洗小町 龍田 玉鬘 定家 雲雀山 松虫 通盛 求塚 夕顔 吉野天人 籠太鼓
2回/年以上の曲:17曲(ここまでが人気上位130位以内の曲)
雨月 梅枝 絵馬 老松 大江山 鷺 七騎落 須磨源氏 西王母 当麻 朝長 仲光 錦木 船橋 水無月祓 夜討蘇我 雷電
1回/年以上の曲:36曲(ここからは人気131位以下の曲)
蟻通 生田敦盛 浮舟 梅 烏帽子折 鸚鵡小町 小塩 姨捨 柏崎 兼平 咸陽宮 木曽 項羽 高野物狂 三笑 鍾馗 昭君 誓願寺 大会 大仏供養 大瓶猩々 玉井 張良 東岸居士 唐船 木賊 鳥追舟 難波 白楽天 芭蕉 氷室 藤 佛原 六浦 和布刈 弓八幡
1回/年 未満の曲:42曲(全部が百番集所収の曲以外となっています。)
藍染川 淡路 碇潜 右近 江野島 大社 合浦 金札 楠露 久世戸 呉服 現在七面 皇帝 逆矛 志賀 春栄 白鬚 代主 住吉詣 関寺小町 摂待 禅師曽我 第六天 忠信 谷行 土車 東方朔 道明寺 知章 錦戸 寝覚 飛雲 檜垣 放生川 枕慈童 松山鏡 身延 室君 吉野静 羅生門 龍虎 輪蔵
曲名を見て気がつくのは、現代人気上位曲(130位以内)に、観世流大成版謡本では、百番集所収曲のほとんどが入っていることです。漏れたのは蟻通・大仏供養の2曲だけです。毎年10回以上の曲は全部が百番集所収曲となっており、逆に年1回未満の曲は全部が続百番集所収曲となっています。
現行曲で、演能回数の集計対象外の曲とその採用流儀:40曲(観=観世、宝=宝生、春=金春、剛=金剛、喜=喜多)
飛鳥川:剛喜、愛宕空也:喜、綾鼓:宝剛喜、内外詣:剛、鵜祭:春、鱗形:剛喜、落葉:剛喜、大蛇:宝剛喜、葛城天狗:喜、賀茂物狂:宝剛喜、祇王:宝剛喜、草薙:宝、現在忠度:剛、現在鵺:剛喜、源太夫:宝喜、元服曽我:喜、佐保山:春、佐渡:春、実方:春、墨染桜:剛、関原与市:喜、泰山府君:剛、大典:観、竹雪:宝喜、檀風:宝剛喜、調伏曽我:宝剛喜、藤栄:宝春剛喜、長柄:春、初雪:春、富士山:春剛、彭祖:剛、松尾:宝、松山天狗:剛、松浦佐用姫:観、三山:観宝剛、水無瀬:喜、御裳濯:春喜、山姫:喜、雪:剛、籠祇王:喜
(赤字の喜多は参考曲。集計対象は月刊「観世」誌掲載有料番組なので、観世採用以外の曲が対象外となっています。なお、観世採用曲の大典は天皇即位奉祝能であり、三山、松浦佐用姫は平成になって採用された曲で、集計対象外となっています。)
次の項目など、引き続き「能楽外縁観測第2部」をご覧になる場合は「謡曲の統計2」から進んで下さい。