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その他 「能楽」外縁観測第2部-9 外縁観測での作者付け

2021-07-01

 外縁観測では、「能楽大辞典」を基礎として、作者が不明不詳の曲を中心に他の資料で補うこととしました。
参照した資料は次のとおりです。

①「謡曲大観」全7巻
1930年刊 昭和5年 佐成謙太郎著 明治書院刊
当時の5流現行250曲及び蘭(らん)曲&曲舞(くせまい)46曲を所収。
曲ごとに作者・梗概・出典等を付す。現行248曲のうち、197曲に作者名。
後代まで名著と評されている。

②「観世流大成版謡本」210曲
1940年刊 昭和15年から207曲 檜書店刊。戦後に「求塚」、
平成に「三山・松浦佐用姫」を編入。前付けに作者・資材・構想・曲趣などを付す。

③「註解 謡曲全集」全6巻
1944年刊 野上豊一郎編 中央公論社 235曲を所収し、曲ごとに作者・主題・出典等の解説を付す。

④日本古典24「世阿弥・禅竹
1974年刊 表章(おもてあきら)・加藤周一校訂 岩波書店刊
世阿弥の能本以外の全著作21編(芸談、書状等含む)と禅竹の主な著作9編を収める。明治末期からの世阿弥伝書発見作業の到達点を示す名著

⑤新潮日本古典集成「謡曲集
全3巻 1983年刊 伊藤正義校注
江戸初頭の1609~1616年に刊行された光悦謡本特製版100番を所収。1曲ごとに旧来の作者付資料に拠らない作者考を示す。(一覧はない)

⑥岩波講座「能・狂言(能の作品と作者)」
1987年刊 横道萬里雄・西野春雄・羽田昶ひさし著 岩波書店刊 室町期の作者考は西野春雄担当。一覧はなく、作者別の作品特徴等を分析。掲出された曲名は、延536曲:内現行319、非現行217曲 重複整理後で、現行175、非現行186曲 平均掲出回数は、現行1.82、非現行1.17回/曲。個々の作者について、A.作者を確定できる曲、B.蓋然性が高い曲、C.伝承があるが決定しがたい曲をあげ、さらに各曲の特徴などから検討。

⑦「風姿花伝・三道」2009年刊
竹本幹夫訳注 角川文庫 世阿弥時代の曲198番(現行248番のうち90番を含む)の出典等一覧を掲載

⑧「能楽大辞典」2012年刊
小林責・西哲生・羽田昶著 筑摩書房  近現代の能楽研究の集大成。一覧表に256曲名を掲げ123曲に作者名を記載。

⑨「能を読む」全4巻
2013年刊 監修:梅原猛・観世清和 角川学芸出版 編集:天野文雄・土屋恵一郎・中沢新一・松岡心平 執筆:観阿弥/西川照子・渡辺保、世阿弥/馬場あき子、元雅$禅竹/鎌田東二、信光他:有馬頼底。128曲(非現行の重衡・丹後物狂・箱崎を含む)を所収。1曲ごとに、作者や上演記録等を付す。


 また、ウェブ検索で次の資料等も参照しました(2021年1月現在)。wは、ウェブ検索資料を示したものです。

w①「能の現行演目一覧」
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/10. 03:01 UTC 版) 218曲掲出、88曲に作者名コメントあり。

w②「金春流演目作者一覧」
金春流167曲を掲げる。後藤和也資料の作者一覧。元は以下の4種辞典等。書名の次に作者名コメントの曲数を付しました。 「能・狂言事典」103(平凡社)、「能・狂言必携」79(学燈社)、「謡曲百番」78(岩波書店)、「謡曲集」62(新潮社)

w③「演目辞典」
ザ能ドットコム 108曲中55曲に作者名を掲げる

 以上の資料からは、現時点で信頼のおける作者一覧は、⑧「能楽大辞典」が、唯一のものと思われます(ブログ担当の不勉強であれば陳謝します)。
 ただし、大辞典も根拠を示しておらず、多くが確定的に作者名を記すか、一部に〇〇かと強く推定するだけで、過半の曲は作者不明・不詳として空白にしています。(外縁観測の現行248曲でいえば、確実な作者91曲、推定作者29曲で、不明不詳が128曲となっています。)

 なお、世阿弥伝書等については、上の各資料の⑤⑥⑧では最大限に考慮されているようです。ウェブについても考慮された結果とは思われますが、傍証程度として活用しました。
 
 外縁観測では、作者が確実な曲、ほぼ作者と強く想定できる曲、関与がほぼ確実又は大きな矛盾なく作者と推定される曲の3段階で、作者を充て、競馬の予想ではありませんが、◎確実、〇妥当、△推定として、作者付けをしました。

 作業の一端を示せば、次のようになります。
 能楽大辞典で作者不明不詳とされている曲及び、他の作者付けと違いのある曲について、上記資料の作者を横並びで記し、妥当と思われる作者を充てていく。
 具体的な例を「安宅」と「海士」で示します。
 「安宅」は、 大辞典で作者不明、西野作者考で「宮増かも」、新潮の伊藤は「信光ではない」、昔の作者付けでは自家伝抄「世阿弥」、二百十番謡目録「信光」、謡曲大観と大成版も「信光」となっており、ウェブでは岩波が「宮増か」、平凡は「信光か」、学燈は「信光存疑」となっています。
 外縁観測としては、1465年の演能初見記録から「信光」では16才で若すぎるとの指摘から、西野の「宮増かも」を採用しました。
海士」は、大辞典で作者不明、西野作者考で「金春権守原作・世阿弥舞事挿入」、他の資料の多くは「不明不詳」、謡曲大観と大成版は「世阿弥」、ウェブでは「金春権守か」が多く、学燈は「権守初演で後場を世阿弥付加か」としています。
外縁観測としては、西野説を採用しました。

 以上の作業の結果、大辞典の作者付けを48曲で変更しました。
 このうち9曲は大辞典の作者を若干変更し、39曲は大辞典で不明不詳の曲に作者を選定したものです。

 曲別作者付けの結果は別途に掲載しますが、大辞典の作者付けを変更した曲を先に掲げます。ゴシックの曲名は現代人気130位以内の曲です。

外縁観測での、作者別の作品数などの一覧などは次回に示します。

次の項目など、引き続き「能楽外縁観測第2部」をご覧になる場合は「謡曲の統計2」から進んで下さい。

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